2024年度 新年度にあたり

日本赤十字労働組合
中央執行委員長
佐々木 伸樹(ササキ ノブキ)

2024年は元旦早々の大地震で始まりました。この能登半島地震で被災された皆様並びにお身内の皆様には、心からお見舞い申し上げます。今も苦難と闘い続けている関係者の皆様に、1日でも早く安らぎの日々が訪れることを切に祈っております。

【はじめに】
組合員の皆さま、日赤の施設に勤務されている職員の皆さま、日々の業務に追われる中で、日赤労組の運動に温かいご支援をいただき感謝の念に堪えません。また、救護活動に従事されました職員におかれましては心より敬意を表します。

さて、昨年4月より新給与制度「Rプラン」が完全実施され、私達の給与体系も大きく変わりました。従前と比較すると、賃金の上昇率が明確に抑制される制度ですが、現給保障により今現在は支給額が下がらないため、改悪が判りづらい一面を見せています。
しかし、今の賃金がすぐに下がらない仕組みにしたことは、組合の取り組みで得られた成果であり、本年は新しい給与制度を理解して、一層の改善に結び付けていきたいと考えています。

【人生の節目】
私はこの4月で本部専従役員として6年目を迎え、年齢も昨年中に60歳となりました。学生時代の友人の多くは定年を迎え、再雇用や新たな人生を歩んでいます。私自身は、少しずつ身の回りを整理することを始めたところです。生命保険や携帯電話料金等の見直しをしたところ、数万円の節約になり、その効果に驚いています。

体力維持も日々欠かせません。週に2回ほどジョギングを楽しみ、今は5kmを30分で走破できるようになり、あと5年はこのタイムを維持できるように走り続けたいと思っています。
しかし、足腰の衰えは感じており、趣味のスキューバダイビングをどのタイミングで「潜り納め」とするかを悩んでいます。 30数年間で約1,500本の経験があると、潜水器材にも愛着があり、器材の処分に躊躇し戸惑いを感じています。おそらく運転免許証を返納するのと同じような感覚かもしれません。

【春闘と新給与制度】
日赤における2023年の賃上げは、全職員平均1.31%(5,058円)と、2022年の全職員平均0.37%(1,431円)と比較し、約3.5倍の引き上げとなりましたが、実施時期は11ヶ月遅れの2024年3月実施です。医療施設の大幅な赤字を主たる理由としていますが、コロナ禍対応や物価高を考えれば、4月遡及が当然でしょう。この本社のいう3月改定を覆すことができなかったことに不満が残ります。
さらに、Rプランでは50歳前後の職員を対象に「調整給」が支給されているため、ベースアップしても賃上げ額と調整給が相殺されているため、実質的に賃上げのメリットはありません。そのような職員が20%程度存在するという問題にも注視する必要があります。連合は2024春闘方針で、生活向上分と物価高などを背景に昨年以上の「ベア3%以上、定昇込み5%以上」を掲げています。

さらに、2024年6月に改訂される診療報酬はプラス0.88%。そのうち、看護職員、病院薬剤師、その他の医療関係職種のベアについて、2024年度にプラス2.5%、2025年度にプラス2.0%を実施するため、特例的な対応としての0.61%が含まれています。政府などが医療従事者の賃金改善を前提に診療報酬上の配分をしていることを踏まえれば、4月の給与改定(ベースアップ)によって全職員が賃上げのメリットを勝ち取ることができるよう、2024春闘の中で運動に組合員と討議し、賃上げに取り組む必要があります。なお、介護報酬の改定においてプラス1.59%、そのうち処遇改善としてプラス0.98%を充てているので、福祉関連施設の労働条件改善も併せて討議していきたいと考えています。

また、一昨年4月からスタートしたRプランでは、特に俸給月額における格付けや昇格について多くの課題があります。課題を克服するには、「制度の透明性を確保」し、そのうえで「公正な評価」が必要です。そのために私たちがすべきことは、「制度の理解」が必須であり、組合員とのコミュニケーションを深めて、問題点を明確にし、改善すべき運動の方向性を定めることが重要になります。施設に対しても、より上位に昇格するために必要なスキルや知見などが向上するよう、丁寧な教育を要求することが必要です。スキルや知見等の向上は、組合員本人のためだけではなく、患者や献血者などの利用者にとってもプラスであり、施設の高評価にも繋がります。

新年度も医療施設の患者数が「コロナ禍前に戻るのは厳しい」と予測され、COVID-19が5類移行後も医療情勢は厳しい状況ですが、日赤労組は組合員と共に労働条件の改善を目指し、運動を進めます。

【ヘルスケア労協】
私は本部中央執行委員長と兼ねて、医療福祉としての産業別労働組合の集合体であるヘルスケア労協の事務局長も兼務しています。日赤労組と大きな違いは、日赤労組以外の労働組合や組織と交流し、情報交換や協働に取り組んでいる点です。

ヘルスケア労協の中心的な仲間は済生会病院の全済労や、北海道社会事業協会の協病労組ですが、他に自治労(地方自治体の市立病院、県立病院等)や全消協(消防職員の協議会)、日本看護協会、関係政党等とも交流し、さらに上部団体として日本労働組合総連合会(連合)にも加盟しています。
病院の収入は「診療報酬」、血液事業の収入は血液製剤の「薬価」に影響を受けます。医療福祉や血液事業の労働条件は、施設や本社との交渉で全て解決することは不可能です。よって、労働条件の改善の礎となる国の制度を、現場の声を基本に改善させていく取り組みが必要となります。しかし、改善を求めて日赤労組が単独で厚労省をはじめとする国の機関に協議を申し入れしても「雇用関係は無い」と拒否されます。そこで、ヘルスケア労協または連合の一員として申し入れをすることで、国は国民の代表として話を聞く場を設けてくれるのです。
昨年は、COVID-19が5類に移行しことによる医療供給体制、人員確保や処遇改善など、日本看護協会と情報交換を行いました。また、血液事業に従事する労働者が「血液の安定確保」のために長時間労働を強いられている実態を連合に伝えたところ、連合はヘルスケア労協と厚労省との話し合いの場を設けるという協力を買って出てくれました。劇的な改善とはなりませんが、確実に前進する取り組みがヘルスケア労協で現実化しています。

【PSIと平和】
ところで、昨年の10月にスイスのジュネーブで開催されたPSI世界大会に参加しました。PSI世界大会は「パブリック・サービス・インターナショナル世界大会」として、世界の公共サービスで働く労働者の組合大会と位置付けられています。日本では「国際公務労連」と称され、国内からは自治労、国公連合、全水道、全消協が参加し、ヘルスケア労協からは、私を含めて3名が参加しました。
世界大会の討議で出てくるキーワードは「民営化」「平和」「医療福祉」「SDGs」です。詳しく言えば、世界で公共サービスの民営化が加速している中で、公共サービスだからこそ公正にできるサービス、新型コロナウイルス感染症と医療従事者の確保(処遇改善)、ジェンダー平等、そして戦争反対になります。

世界大会の開催直前にはイスラエルとハマスの紛争が始まり、ロシアによるウクライナの侵攻は終わりの見えない戦いが続いており、多くの人が傷つき亡くなっています。その現状を当事国の組合員が報告し、大会の場で侵攻停止と、停戦の求める特別決議が全会一致で承認されました。
連日の討議は白熱し、制限時間を超えて代議員が発言し、時おり議長が制止するなど、私が経験したことがない真摯な訴えと議論がそこにありました。
日本においては、戦後、大きな紛争に巻き込まれることなく、平和憲法のもとで生活ができていました。しかし、一旦戦争がはじまると、破壊によって普通の生活は崩壊し、憎しみが憎しみを生む負の連鎖が続きます。

政府は、周辺国の圧力に対して防衛力の強化を進め、令和24年度の国家予算でも防衛費が16%増加と突出しています。「国を守る」ということは否定しません。しかし、守るべき国土や国民が先に衰退することは避けなければなりません。教育や社会保障の予算を拡充し、人を育てて外交力を高めることが、日本を平和的に守ることに繋がっていくと信じています。

【団結してガンバロウ】
この数年間、新型コロナウイルス感染症により、各支部における新規加入組合員のオリエンテーションなどが開催できず、日赤労組の組合員数も減少しています。しかし、今こそ組合の意義を伝え、根気強く仲間を増やしていく取り組みが必要です。

辛いこともありますが、「日赤に勤めて良かった」「組合員で良かった」と言ってもらえる組織を目指し、本部執行部一同は活発に議論を行い、組合の組織拡大強化に向けて努力していきたいと思います。
皆さんの声の繋がりが組合の強化拡大になります。仲間との連携を強化し、職場環境の改善に向けて一緒に声をあげましょう。ぜひ組合に相談(加入)してください。どうぞよろしくお願いします。

新年度も団結してガンバロウ!